2025/07/29
障がい者法定雇用率の最新情報は、企業にとってかかせません。
本ブログでは、制度の基本から2025年最新の基準まで、企業がいま注意すべき点を解説します。
企業や業態にあわせた障がい者雇用の方法をお探しの場合は、ZERO(ゼロ)がお力になります。
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障がい者法定雇用率制度の基本と2025年の最新情報を順番に見ていきましょう。
障がい者雇用率制度とは、従業員が一定以上在籍している企業は、決められた割合の障がい者を雇用するように、という決まりのことです。
これは「障がい者雇用促進法43条第1項」に定められ、事業主に義務づけられています。
制度において、民間企業の法定雇用率は2.5%と決まっています。
例えば、40人以上従業員のいる企業の事業主は、障がい者を1人以上雇用しなければなりません。
なお、制度で定められている障がい者とは、身体障がい者・知的障がい者・精神障がい者を指します。
義務を履行しない事業主にはハローワークが行政指導を行います。
実雇用率とは、その企業で実際に雇われている障がい者の割合のことです。
制度を詳しく見ていくと、法定雇用率と実雇用率という2つのワードが出てきて混乱する方もいるかもしれません。
これら2つの用語は、ほとんど同じ意味としてとらえて問題ありません。
しかし、数字に関しては注意が必要です。
障がい者雇用率制度は、誰もが職業を通じて社会参加ができるように定められた法律であり、日本が「共生社会」として機能するために重要な制度です。
そのため、事業主は法定雇用率以上の割合で障がい者雇用を推進していくことが求められます。
ゆえに、実際は法定雇用率以上の割合で障がい者が働いていることが望ましく、実雇用率の方が上回る必要が出てきます。
法定雇用率は、はじめから2.5%に固定されていたわけではありません。
1987年までは1.5%で、その後少しずつ引き上げられてきました。
推移は以下の通りです。
1.6%(1988〜1998年)
1.8%(1999〜2012年)
2.0%(2013〜2017年)
2.2%(2018〜2020年)
2.3%(2021〜2023年)
2.5%(2024~2026年)
2.7%(2026~2028年)
制度は2024年6月1日に再度改正されて、現在の2.5%になりました。
この推移をみると、障がい者雇用率は年々上昇していることが分かります。
今後も、数年おきのタイミングで引き上げが行われる可能性もあるでしょう。
先には、実雇用率が法定雇用率を上回っている必要があると紹介しましたが、上昇を見越して雇用率を高めていく中長期的な計画も、同時に必要となってくるかもしれません。
さて、障がい者雇用率制度について基本をおさらいしたところで、いよいよ2025年の最新情報についてみていきましょう。
2025年現在、民間企業の法定雇用率は2.5%に定められています。
ここから、雇用率算定方法を割り出すことができます。
法定雇用率制度には、特定の業種に適用される除外率制度も存在します。
こちらも年度によってパーセンテージが変更になっているので、細かくチェックしておく必要があります。
実際に数字と式を使って、分かりやすく見てみましょう。
例:150人(常用雇用労働者)×2.5%(法定雇用率)=3.75人
上記のような場合、小数点以下は切り捨てのため、雇用人数は3人となります。
しかし、障がいをもっている従業員の数が、そのまま算定対象となるわけではありません。
・1週間あたりの総労働時間
・障がいの程度
この2つの基準によってカウント数が異なります。
週所定労働時間 |
30h以上 |
20h〜30h未満 |
10h〜20h未満 |
---|---|---|---|
身体障がい者 |
1(重度:2) |
0.5(重度:1) |
ー(重度:0.5) |
知的障がい者 |
1(重度:2) |
0.5(重度:1) |
ー(重度:0.5) |
精神障がい者 |
1 |
1 |
0.5 |
なお、算定対象になる方は、どのような障がいの場合も原則として障がい者手帳、あるいは認定書類を有していることが必須となります。
参照:厚生労働省「障害者雇用のご案内〜共に働くを当たり前に〜」
https://www.mhlw.go.jp/content/000767582.pdf
除外率制度とは、一般的に障がい者の就業が困難とされている業種において適用されます。
この場合、除外率に当てはまる労働者数は控除されて、障がい者の雇用義務は軽減されることになっています。
しかし、この除外率制度は、現在「段階的縮小」の経過措置がとられていることに注意してください。
平成14年、ノーマライゼーション(標準化:社会的少数者に対して、一般の人と同じ生活と権利が保障されること)の一環として、障がい者雇用促進法の改正が行われました。
その一環として、除外率制度も段階的に引き下げを行い、完全廃止を目指す方向で社会が進んでいます。
2025年現在、除外率制度の対象となっている業種と除外率は、以下のとおりです。
・非鉄金属第一次製錬/精製業/貨物運送取扱業(集配利用運送業除く):5%
・建設業/鉄鋼業/道路貨物運送業/郵便業(信書便事業含む):10%
・港湾運送業/警備業:15%
・鉄道業/医療業/介護老人保健施設/介護医療院/高等教育機関:20%
・林業(狩猟業除く):25%
・金属鉱業 ・児童福祉事業:30%
・特別支援学校(視覚障害者に対する教育を行う学校除く):35%
・石炭/亜炭鉱業:40%
・道路旅客運送業 /小学校:45%
・幼稚園/幼保連携型認定こども園:50%
・船員等による船舶運航等の事業:70%
参照:厚生労働省「除外率制度について」
https://www.mhlw.go.jp/content/001133551.pdf
法定雇用率制度には、いくつかの特例があります。
よく知られているのは、「特例子会社制度」です。
特例子会社制度は、事業主が障がい者に配慮した業務を行える子会社を親会社とは別に設立し、障がい者を雇用する制度です。
この場合、子会社で雇用されている障がい者は、親会社に雇用されているとみなされ、実雇用率を算定することが可能です。
他に、複数の事業主で実雇用率を通算できる「企業グループ算定特例」や、組合を利用して協同事業を行うことで通算が可能になる「事業協同組合算定特例」などがあります。
実雇用率が低いとペナルティがありますが、法定雇用率以上の雇用を達成している企業には、さまざまな支援制度が適用されます。
実雇用率が法定雇用率を下回った場合、障がい者雇用納付金を支払う必要があります。
納付金は不足する障がい者一人につき、月額50,000円です。
このペナルティは、常時雇用労働者数が100人を超える企業が対象です。
障がい者雇用調整金とは、法定雇用率を超えて障がい者を雇用している企業を支援する目的で支給されています。
金額は、法定雇用率を超えている障がい者一人につき、月額29,000円と定められています。支給対象人数が年120人月を超える場合は、超過人数分が一人あたり月額23,000円に減額されます。
先ほど紹介した、法定雇用率を下回った場合に支払う「障がい者雇用納付金」は、この障がい者雇用調整金に充てられます。
なお、この調整金制度も常時雇用労働者数が100人を超える企業が対象です。
規模と人数を満たしている企業の事業主が申請することで、調整金を受け取ることができます。
ほかにも、障がい者雇用に対する支援制度はあります。
例えば、在宅就業障がい者やその支援団体に対して仕事を発注した企業は、その旨を申請することで、在宅障がい者特例調整金の支給を受ける、あるいは障害者法定雇用率未達成の場合に支払うべき障害者雇用納付金の減額ができます。
また、常時雇用労働者数が100人以下の企業であっても、障がい者の雇用数が一定以上の場合、一人あたり月額16,000〜21,000円の報奨金が支給される制度もあります。
誰もが暮らしやすい社会を目指して、日本では国を挙げて障がい者雇用促進に取り組み、制度を整えています。
ハローワークや就労支援施設を活用して、職場環境を整えていきましょう。
全国都道府県労働局とハローワークは、求人受理や紹介を通じて障がい者雇入れの支援を行っています。
障がい者雇用セミナーや職場等見学会、「精神・発達障がい者しごとサポーター養成講座」をはじめとした、適応支援事業、雇用促進の取り組みが実施されており、相談窓口では、上司・同僚、人事担当者からの相談に対応しています。
障がい者雇用は、採用がゴールではありません。職場に適応し、長く働いてもらえることが大切です。
そのため、国の機関では、専門の支援者による定着支援が実施されています。
ハローワークなどでは、障がい者本人の業務遂行力や、コミュニケーションスキルの向上を目指したりする講習が実施されています。
さらに、職場定着に必要なことをヒアリングして個別的なサポートを実施することで、一人一人に合わせた支援を実現しています。
障がい者法定雇用率は、段階的に引き上げられています。
法定雇用率制度の除外率制度や、支援制度も、細かな変更が繰り返されているため、最新の情報は厚生労働省の公式発表を確認すると良いでしょう。
雇用計画を立てる際は、雇用率の引き上げを見越して数年単位で障がい者雇用の割合を増やしていく、短時間雇用を活用する、などの対策もあわせて検討してみてください。
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