2025/05/29
ADHD(注意欠如多動性障害)は、発達障害のひとつです。
「Attention-Deficit Hyperactivity Disorder」の頭文字をとった名称が使われています。
ADHDの方が直面する職場での困難はさまざまですが、適切な職業選びと職場環境の工夫により、特性を活かして働くことが可能になります。
長野県で就労支援を行うZEROでは、就労移行支援サービスの活用や、ADHDの方が働きやすい社会の実現について皆さんと一緒に考えています。
今月のブログでは、ADHDの特徴、職場での影響、職業選びのポイント、求められる企業の配慮についてまとめました。
ADHDは、「注意力の散漫さ」、「集中の難しさ」、「多動性」、「衝動性」を特徴とします。
順序立てて行動することや、じっと待つこと、衝動的な行動を抑えることが難しく、日常生活で苦労することがあります。
なかには、うつ病や双極性障害、不安症、自閉スペクトラム症を伴っているケースも少なくありません。
ADHDのこうした特性は、職場においてもさまざまな形で現れます。
例えば、集中力が続かずタスクの遂行に時間がかかる、コミュニケーションがうまくいかずパニックに陥ってしまうといったことがあります。
しかし適切な理解とサポートがあれば、こうした特徴を改善し、個人の強みとして活かすこともできます。
ADHDは特性の現れ方によって3つのタイプに分けられます。
まずご自身のタイプを知ることで、特性を活かす職場を探しやすくなるでしょう。
不注意優位型は、物事に集中して取り組むのが難しい型のことです。
不注意によるミスで作業に時間がかかったり、与えられた順番通りに物事をこなすのに困難を感じる方が当てはまります。
多動性・衝動性優位型は、落ち着いて机に向かうことに困難を感じる型のことです。
机に座ってじっとしていなければならないシーンでも、手足を絶えず動かすという特徴もみられます。
カッとなると暴力に訴えたり、順番を待てずに割り込んだりすることもあるため、「身勝手」というレッテルを貼られてしまうこともあります。
不注意優位型と多動性・衝動性優勢型の特徴を併せ持っているタイプが、この混合型です。
一般的に、ADHDと診断された方のおよそ7割は、この混合型に当てはまるといわれています。
職場におけるADHDの影響としては、ミスの増加やコミュニケーションの齟齬(そご)が挙げられます。
他者とのコミュニケーションや細部への注意が求められる場面で、特性が課題となることがあります。
しかし、クリエイティブなアイデアを生み出す能力や迅速な反応力といった長所も持ち合わせているため、適切な職場環境では大いに活躍することが可能です。
ADHDの方が直面しがちな困難さと、その改善例をケーススタディとして見てみましょう。
営業職のAさんは、優先順位をつけるのが苦手でした。
複数案件を同時に進める際、締め切り直前まで手を付けることができず、残業が常態化していたのです。
改善するため、タスクを一覧化するボードを導入し、上司と毎朝5分確認する仕組みを整えたところ、遅延を大幅に減らすことができました。
Bさんは開発部に勤務しています。
興味のあるプログラムに取り組むと周囲が見えなくなり、食事や休憩を忘れて何時間も席を離れないことがありました。
そこで、定期的に立ち上がるアラームをPCに設定、チームで声を掛け合うルールを作りました。
この配慮により、業務効率を維持しながら健康面のリスクを軽減できるようになりました。
Cさんはコールセンターに勤務しています。
口頭で複数の依頼を受けるのが苦手で、業務が立て込むと一部の指示を聞き漏らしてしまうことがありました。
そこで、本人の希望をヒアリングしてイヤフォンマイクを導入、さらに指示をリアルタイムにメモへ転送できるソフトを導入しました。
この対処により、エラー率は月平均で半分以下になり、集中して業務に取り組めるようになりました。
Dさんは、接客業に従事しています。
業務中、突然の予定変更やクレーム対応時に感情が高ぶって、声が大きくなる傾向がありました。
これを改善するため、同僚とのロールプレイ研修を実施、さらに感情が揺れた際に休憩スペースへ移動できるルールを整備しました。
この改善策のおかげで、Dさんのストレスを軽減できただけでなく、顧客満足度の低下も防ぐことができました。
これらの事例は、環境調整やチームの理解があればADHDの特性を弱点ではなく強みへ転換できる可能性を示すものです。
ご本人が困難さを言語化し、周囲が具体的なサポート策を共有することで、生産性と心理的安全性の双方を高めることができます。
職業選びの際には、ADHDの特性を考慮することが重要です。自分の強みを活かせる職場であれば、能力を最大限引き出すことができるでしょう。
ADHDの方には、好きなことへの高い集中力や独創的な発想、フットワークの軽さといった強みがあります。
特性を活かせる代表的な職業を三つ挙げ、適性ポイントをまとめました。
視覚的なアイデアを形にする仕事では、「ひらめき」が価値になります。
短期案件も多く、集中の波を活かしやすい点もメリットになるでしょう。
進行管理や修正履歴は専用ソフトで補助するといった対策を講じることで、発想にエネルギーを注ぎやすくなります。
顧客の課題を聞き取り、解決策を提案する業務は、即応力とコミュニケーション力が鍵です。エネルギッシュなトークや瞬時の状況判断が成果につながりやすく、数字で評価が可視化されるためモチベーションも保ちやすい職種といえます。
プログラミングやシステム構築に関心のある方は、過集中がプラスに働き、短時間で高いアウトプットを出せる可能性があります。
在宅で仕事ができる企業も多く、刺激の強さを自分で調整しやすい点も魅力です。
ADHDの特性は、アイデアやスピードが求められ、工程管理がツール化されている仕事のほうが適性を伸ばしやすいといえます。
一方で、成果よりも過程が評価される職場や、繰り返し作業が多い職場、細かいルールに従う必要がある職業は、避けた方が良いとされます。
例えば、工場のライン作業やルーティンワークが多い事務職は、集中力を持続させることが難しいため、大きなストレスの原因となることがあります。
企業がADHDへの理解を深め、その特性を尊重した環境を作ることは、双方にとって大きなメリットです。柔軟な勤務体制や集中できる作業環境の提供、あるいはサポート制度の充実が、その一例です。
これらの配慮によって、ADHDの方は自分の力を最大限発揮し、企業は創造性と多様性を活かした成果を得ることができるのです。
ADHDの方が特性を活かして働ける企業や、適切なサポート体制を整えている企業を探すのは、難しいことかもしれません。
そんな時は、就労支援を活用してみてください。
ZEROでは、ADHDの方が職場に適応し、活躍できるようにするための就労移行支援サービスを実施しています。
就労支援は、ADHDをはじめとしたさまざまな障害を持つ人の、生活しやすさや働きやすさを共に考えていくというサービスです。
就労支援は、まず相談からスタートします。
必要があれば、ご本人だけでなくご家族や周囲の方にもヒアリングしながら、その人にとってどのような職場が適しているのかを検討します。
ご本人と一緒にそれぞれに合わせた個別の支援計画書を策定し、それに基づいて行動します。
実際に職場見学をしたり、実習やグループワークを行ったりして、「働くイメージ」を積み重ねていきます。
応募書類の確認や面接の練習といった、就職活動に関わる支援も受けることができます。
ADHDの方の特性に合わせて、ミスを防ぐ方法や、コミュニケーションの実例といったテクニックを学ぶことも可能です。
ZEROは、長く働き続けるための「就労定着支援」にも力を入れています。
ADHDの場合、特性によって仕事が長続きしない方も少なくありません。
数ヶ月で退職を繰り返していると、ご本人にとってのストレスが大きくなるだけでなく、キャリア形成にも支障が生じてしまうリスクがあります。
ZEROでは、カウンセリングを継続的に実施することで、精神的サポートをしっかりと行い、長く働き続けるための仕組みを作っています。
ADHDの方が働きやすい社会を実現するためには、障害への理解と支援体制の充実が不可欠です。
ZEROは、個々の特性に寄り添う姿勢と柔軟な制度の整備により、各個人が自分らしく活躍できる環境が構築されることを願っています。
「仕事が長続きしない」、「周囲とのコミュニケーションがうまくいかない」といった就労の悩みを持つADHDの方は、一人で悩まず、お気軽にご相談ください。
ZEROは、あなたに合った働き方を一緒に探していきます。
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