
2026/06/30
はじめに.
日本では、職場に起因するうつ病発症率が高いといわれています。
再発しやすいため、回復していない状態で就職・転職活動をするのは望ましくありません。
自分の状態を知り、主治医と相談しながら、就労移行支援などの制度を利用して無理のない仕事を探していきましょう。
うつ病は気分障害の一種とされています。
気分障害は、気分の極端な落ち込みや異常な高揚が長く続いて、生活に支障をきたす精神疾患の総称です。極端な落ち込みを「うつ状態」、異常な高揚を「躁状態」といいます。
これらの気分の波は、気のせいや思い込みではなく、神経伝達物質のバランスが崩れることで起こります。
現代では、日本人の約15人に1人がかかる病気とされています。
うつ病では、気分の波がはげしくなる、意欲が低下するといった精神的な症状以外にも、睡眠障害、めまい、食欲不振などが起こることもあります。
うつ病の原因は人それぞれで、自分ではこれといった理由や原因を見つけられないこともあります。
また、これらの症状は、朝にもっとも出やすく、午後から夜間にかけて改善してくることもあります。
厚労省は、次のうち5つ以上(1か2を含む)が2週間以上続く場合は、専門家に相談したり、受診を検討したりすることをすすめています。
【うつ病の特徴】(厚労省の「こころもメンテしよう」より引用)
うつ病の方の中には、学生時代に発症して「働くこと」や「仕事という新しいルーティンに取り組むこと」に不安を抱く方もいます。
また、就労中に発症すると、症状が落ち着いたタイミングで復職・転職したくても「また悪化するかもしれない」という恐怖心から就職活動が困難になるケースもあります。
これは、うつ病の方に問題があるわけではありません。
企業や職場がうつ病について理解不足だったり、受け入れ体制が整っていなかったりすることがハードルとなっています。
うつ病は、再発率60%の病気といわれています。
また、一度再発すると再々発の可能性が高まるといわれており、注意が必要です。
自分がもう働けると思っても、主治医や家族と相談して、無理のない復帰を目指しましょう。
また、職場復帰はうつ病への理解がある企業や、制度の整っている職場を探すようにしましょう。
うつ病と仕事について向き合うためには、自分の「認知のクセ」を知り、主治医とよく相談して無理をしないことが肝心です。
認知のクセとは、実際の出来事に対してかけるフィルターのようなものです。
例えば、企業から採用見送りの通知を受け取った場合、事実は「採用されなかった」ということだけです。
しかし、自責や他責のフィルターがかかっていると、事実とは異なることを連想してしまいがちです。
・採用されない自分は、誰からも求められていないダメ人間だ(自責)
・採用しないなんてひどい会社だ、担当者は意地悪だ(他責)
・この会社に落ちたら次も落ちるに決まっている(過度の一般化)
・自分のような人間は、辛くても我慢して働くべきだ(すべき思考)
・自分が不運だから/怠けているから採用されなかった(自分への関連づけ)
こうしたうつ病の方が抱えやすい思考についてあらかじめ理解し、自分の認知のクセを把握することで、客観的な視点をもち、視野を広げて就職・転職活動ができるようになります。
うつ病の方は、休職・離職した場合に、「福祉サービス」と「雇用支援」を受けることができます。
治療や回復状況によって適した支援があるため、主治医と相談してみましょう。
ここでは、「就労移行支援」、「就労継続支援」、「定着支援」についてどのようなことをするのか、詳しくみていきます。
また、地域障害者職業センターなど、就労に向けて頼りになる施設も紹介します。
就労移行支援とは、精神疾患や身体障害のある方が就労を目指すために利用するサービスです。
利用者の現状と目標に合わせて、一人ひとりに「個別支援計画」が設定され、それぞれに適した就活サポートが受けられます。
具体的には、パソコンスキルやビジネスマナーといった実務的な訓練、就職活動に備えた模擬面接、さらに履歴書の添削なども実施しています。
原則2年間はサービスを利用できるので、焦らず自分のペースで就職活動に取り組むことが可能です。
通所することで、生活のリズムを整えたり社会参加の機会を持てたりするのも特徴のひとつです。
就労継続支援は、障害や体調のために一般就労が困難な方へ向けて、働く機会を提供する福祉サービスです。
A型とB型の2種類があり、それぞれに対象となる方が異なります。
就労継続支援A型は、就労継続支援A型事業所と利用者の方が雇用契約を結んで働きます。法律で定める最低賃金が保障されており、A型で働く自信をつけてから、就労移行支援を受けることを目指す方もいます。
就労継続支援B型は、雇用契約を結びません。そのため、給与ではなく作業に応じた工賃という形で、報酬が支払われます。
時給換算で300円程度と、A型よりも得るお金は高くありません。
しかし、体調や気分に合わせて無理なく働けるため、無理せず社会参加の機会を持ちたい方に向いています。
就労定着支援は、就労移行支援などで就職した方が、今の職場で継続して勤務できるよう相談やサポートをするサービスです。
就職先の企業とも面談を行い、利用者の方と医療機関など各方面と連携して環境を整えます。
地域障害者職業センターは、障害のある18歳以上の方を対象とした就労支援に関する公的機関です。
職業の適性を見て支援内容を決める「職業評価」やスキルを高めるための「職業準備支援」のほか、ハローワークと連携して就職先の提案も行なっています。
利用できるのはうつ病などの精神障害を抱えた方や、身体障害者の方です。
障害者手帳の有無は問われず、医師の診断書があれば利用できます。
就労移行支援をはじめとする公的なサポートを得る場合、どのような手続きが必要になるのでしょうか?
利用するための流れと、利用に必要な手続きは次のとおりです。
就労移行支援の利用は、事業所探しと見学から始まります。
自分に合った事業所を見つけたら、見学や体験利用を申し込んでみましょう。
見学・体験は必須ではありませんが、いきなり利用するよりもミスマッチが少ないのでおすすめしています。
体験できる日数は、数日から数週間など事業所によって違いがあります。
利用したい事業所が決まったら市区町村の福祉窓口へ行き「障害福祉サービス受給者証」の申請を行います。
受給者証は申請から交付までに時間がかかりますが、交付までは「仮の受給者証」を発行してもらうことで通所することができます。
【利用までの流れ】
・事業所探しと見学
・見学/体験利用
・障害福祉サービス受給者証の申請
(持ち物:申請書/障害者手帳か医師の診断書/本人確認書類/相談支援専門員による「サービス等利用計画案」)
・受給者証交付(申請から約1ヶ月前後)
・事業所と利用契約を締結
・利用開始
5-3. よくある質問
Q:障害者手帳は必要ですか?
A:障害者手帳は必須ではありません。就労移行支援は、障害者手帳がなくても利用できます。
ですが、障害者手帳(精神障害者保健福祉手帳)を持っていると支援制度を利用しやすくなります。また、公共機関の割引サービスや税金の減免、医療費の助成を受けやすくなるので、経済的自立を目指す方にとってはメリットがたくさんあります。
障害者雇用の求人に応募するためには障害者手帳が必要なので、主治医と取得について相談する方がよいでしょう。
Q:うつ病の治療中も就労支援を受けることはできますか?
A:はい、治療中でも就労支援は受けられます。体調に合わせて通所日数や時間を調整できることもあり、無理のない範囲で治療と支援を両立することは可能です。
しかし、医師がまだ回復に専念すべきと診断したら、休養を優先すべきです。就労支援を検討する場合は、必ず主治医と相談するようにしてください。
Q:就労移行支援は利用期間が決まっていますか?
A:はい、就労移行支援を利用できるのは原則として2年間です。期間内の就職が難しい場合や、条件によっては延長できるケースもあります。
支援の利用にあたっては、一人ひとりに合わせた個別支援計画が作成されます。これは定期的に見直され、その時に必要な支援が都度受けられるようになっており、期間内で安定した就労基盤を作ることができると想定されています。
うつ病を抱える方は、睡眠障害に悩む方も多く、就労移行支援を通じて身体のリズムを調節しなおす必要があるケースも少なくありません。
特に、一般的な勤務時間と同等の時間に何らかの活動ができているかどうかは、病気からの回復を知る指標となります。
眠れない、眠り過ぎてしまうなどの症状を改善するのに役立つものとして、日中に光を浴びることや、ウォーキングなどのリズム運動が推奨されています。
また、行動記録をつけて「どのような場面で抑うつの状態になりやすいか」を知ることも役立つとされています。
うつ病の方の中には「早く仕事復帰しないと」と焦燥感にかられるあまり、「雇ってくれる企業ならどこでもいい」と過酷な職場に戻って再発してしまう方もいます。
そうならないよう、通所訓練や適職評価などでゆっくりと計画を進めていきましょう。




